著者:河野大樹先生 連載先:Kindleインディーズ,スキマ等
1. あらすじ
全てを捨てて楽になろうとした私は 命を絶って初めて 生まれ変わる為闘うことを選んだ
死んだブスに与えられる最後のチャンス・・・ブス界は美人を食べれば食べる程、綺麗になって生まれ変われる世界
ブスであることに疲れて自殺した主人公は、不思議な世界『ブス界』で目を覚ます。
なにかと闘うなんて考えたこともなかった主人公が、自分自身を変えるために最初で最後の命懸けの勝負に挑む。
2. 登場人物
悲恵子→加英子
『無理だと言われていることを覆していかなきゃ私はきっと何も変えていけないもの』
『本当は負けたら負けただけ 私たちは強くなれる筈なんだ』
ドキンちゃんに似たファクマのアドバイスからは知識や考え方の基礎を、敵の一味である左蛇の生き様からは信念と覚悟を、それぞれ学び取り、『自分を変えるために決して変わってはいけないこと』を自覚し己の持つ『得意』を発揮して、レベル1としては破格の強さでレベル2の万子を撃破します。
奪い合うことが当然のブス界で決して奪うことなく強くなりたいと願い、倒した相手を救うことを選びます。
自己を肯定することで強くなりながらも、他者を否定する力を良しとしない、強く優しい女性として成長していきます。
ファクマ(ドキンちゃん似)
『お前脅かすどんなやつも皆同じ もとは全員ただのブス』
『自分の目で確かめたものだけ 本当の自分 チカラになる』
カエ子を主人公足らしめた存在その1です。
彼女(?)はファクニマ―チャーから作られた乗り物で、万子・右蛇・左蛇がカエ子をはじめとした『ブス界に新生したレベル1』を回収するために乗ってきた物です。
カエ子にしか聞こえない声で、ブス界のイロハを教え、発破をかけ、強くなるための助言を与えます。
彼女自身は『この世界のブスは死ぬとファクニマ―チャーというただの物資になって自己を失う』と表現し、レベル2の万子は『ファクニマ―チャーで作られた人工物に意思はない』と言います。
しかし彼女の知識は深く、レベル2の万子を大きく上回ってるように見えます。
ファクニマ―チャーがただの物質ではないことを示唆する一つ目の存在です。
左蛇
『出来ること 出来ないこと 無意識に決めつけてるのはどんな嫌味な敵でもない 自分自身』
『勘違いであれ自分を信じることが最高のドーピングになる』
カエ子を主人公足らしめた存在その2です。
レベル4の砂子と敵対することとなり、万子・右蛇に命を捨てて時間を稼ぐよう指示をされたことを恨むことなく、仲間のために文字通り全身全霊を燃やして闘った女性です。
彼女の覚悟と行動を伴った言葉がカエ子の心を強く揺さぶり、その後のカエ子に強い影響を与えます。
万子
『お前は強い きっとこの世界の頂点に辿り着く』
『もっともっと強くなれ どんなに苦しくても お前ならできるから』
「よろずこ」ではないと言っておきます。
万子は己よりも強いものには頭を垂れ、己より弱い相手には強く出るという性格をしており、『ラッキーなブスは嫌いだ』とカエ子を殺害すべく攻撃を加えますが、極限まで追い込まれたカエ子に撃破されます。
撃破された万子は己の上司である園子に踏み躙られましたが、その姿を我が身の痛みのように感じたカエ子の義憤に心を救われました。
己の命を奪うどころか心を救ってくれたカエ子が己の上司に負けてしまうことを我が身の悔しさと感じた彼女は己の腕をカエ子に与え、己を倒したカエ子に『信じる』言葉を託し、名前を表す新しい意味と漢字を提案しました。
砂子
『運良く恵まれたアンタなんかに 私は絶対負けられないのよ』
『お前が闘うべき相手の方を向け』
ブス界のヒエラルキーの頂点に君臨する存在であるレベル4の一人です。
ドキンちゃん似のファクマによれば三大派閥の一人で、凄く賢い一番の問題児とのこと。
『誰の事も信じない、手下も持たない、自分の事だけ信じてる、誰よりも己の欲望に真っ直ぐな女』であるらしく非常に美しい容姿をしています。
ブス界で勝ち抜くための才能を持たず、己の頭脳と反骨心と努力で不幸を乗り越えてきたことを誇りとしており、恵まれなかった境遇を糧として捉えているようです。
3. 作品の面白さ
恵まれなかった人間がそれでも立ち上がるための物語
才能や境遇に恵まれなかった主人公が、それでも打ち込んできたことや、悔しさをばねに立ち上がる不撓不屈の意志、
他人の言葉からの学びを以て理不尽な世界に立ち向かっていく姿が胸を打ちます。少年誌のような熱さの中に大人向けの啓発がこめられたような素晴らしい作品です。
多くの人が人生のどこかでぶち当たるであろう挫折ではありますが、恐らく全ての挫折を乗り越えきることなく、いくつかの挫折となんらかの折り合いをつけて生きることを選んでいることもあるのではないかと思います。この作品を読むことで、もう一度挫折と真正面から向き合い、立ち向かう意志を持てるのではないかと思います!
優しさを忘れないことの大切さに気付かされる
この物語はまた、少年誌の熱さの真横に優しさを強く含んでいます。
(この優しさについて、管理人は宮沢賢治先生の小説に通じるものを感じています。)
人の痛みに共感できる優しさを持つカエ子は、人を踏み躙ることを良しとせず、他人を否定することを好みません。それを甘さと断ぜられることもありますが、カエ子の言葉や行動に触れて救われる人も確かにいて、そういう人達にカエ子も救われるのです。
(これは善行の見返りの話ではなく、善行の尊さを重視して描かれているように見え、その視点が宮沢賢治先生の諸作品に見られるようなものと近しく感じられました。)
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